タフで優しい会社にしたい。だから“合言葉”は「ハードボイルドに、いこう」

大島 悠 / 合同会社ほとりび 代表

ほとりびには、会社の「合言葉」があります。それが、「ハードボイルドに、いこう」。……はい、なんだかよくわかりませんよね。当然です。なんというか120%、わたくしの趣味です。(ハードボイルド小説好き)

みなさんは、「ハードボイルド」と聞いて何を思い浮かべるでしょうか。

暴力……? ヤクザ……? 裏社会……? えっ…………??

参考)「ハードボイルド」のGoogle画像検索結果(……)

 

……安心してください。ほとりびの目指す「ハードボイルド」は、そういうことではありません。(当たり前か)

「タフでなければ生きていけない。優しくなければ、生きていく資格がない」

この台詞、ご存知でしょうか。とある有名作家が主人公に語らせた、短い言葉。ここに「ハードボイルド」なあり方がぎゅっと詰まっているんです。ほとりびは、そんな会社でありたいと思っています。

 

「ほとりび」のメンバー(現在はアシスタント2名)にわたした「合言葉」第一号。

 

なぜ社員もいないのに「合言葉」をつくったのか

ほとりびの事業も含め、過去にわたしが手がけてきた仕事はすべてクライアントワークで、“第三者”の立場から、いろいろな言葉や文章の編集をお手伝いしてきました。

ときには会社の根幹に関わる、「企業理念」や「MVV(Mission/Vision/Value)」、「事業コンセプト」などを言語化することも。

しかし言葉というのは本当にあつかいが難しく、正直なところ、“それっぽい”言葉ができただけで終わってしまうケースも、たくさんありました。その都度、自分の力不足を痛感しては悔し涙がちょちょぎれたものです。

とっくに形骸化して額に飾ってあるだけの理念やコンセプトもよく見かけますし、「うちは小さい会社だから必要ない」と考える経営者の方も、一定数いらっしゃいます。

でもわたしは、たとえ社員がひとりだろうと、1万人の組織になろうと、「会社のあり方を示す“生きた言葉”は絶対に必要だ」と思っています。

だからまだ社員は誰もいないけれど、まがりなりにも会社をつくり、関係者を巻き込んで活動していくのだから、「会社としてこう在りたいと思ってますよー!」と、最初にハッキリさせておきたいと思いました。

なにより、支援先の企業のみなさんに「経営には生きた言葉が必要なんです!」なんて、日々エラそうに言っているのです。自社でそれを実践して結果出してないことほど、かっこ悪いことはないですもんね。

 

バリューでも行動指針でもなく「合言葉」がしっくりくる

会社として大事にしたいことをいちばん理解してほしいのは、パートナーとして一緒に働いてくれる人たち。ただし今のほとりびの場合、パートナーさん全員が、他の仕事もかけもちしているフリーランサーです。

週5フルタイムのオフィス勤務に完全コミットしてもらい、社会保険やら何やらを会社で負担したうえ給与をしっかり支払っているのとは違います。

「ほとりび」で働いてくれる時間は、彼・彼女たちの人生のごく一部にすぎません。

その「人生のごく一部」である取引先の会社から、「さあミッションだ! ビジョンだ! 行動指針だー!」と、例えば何十項目もある細かいテキストを送りつけられても……「知らんがなっ」って、なりますよね。絶対に。

そんなにたくさんのこと、そもそも覚えてもらえるわけがない。ましてや、それを実践してほしいなんてあまりにもハードルが高いし、虫も良すぎます。

そのあたりをぐるぐる考えた挙句、立派なMVVではなく、「うちはシンプルな“合言葉”をつくろう!」というところに落ち着きました。

  • パッと一度みたら忘れないインパクトがあること
  • 体現したい会社のあり方をぎゅーっと凝縮していること
  • いろんな場面で応用できる余白があること

このあたりを考えた結果、ほとりびの“合言葉”である「ハードボイルドに、いこう」が決まりました。(趣味から着想を得たけど、そこはちゃんと考えてる)

必ずしも、よくあるフレームワークを踏襲しなくてもいいんですよね。なによりも自社の状態や目的に合わせることが大事だと思っています。じゃないと「言葉が生きない」から。

 

ところで「ハードボイルド」ってなんだ

さて、本当はここらで「ハードボイルドとは何か」「わたしの好きなハードボイルド小説」「ハードボイルドな仕事人の生き様」などを語りはじめたいところなのですが、とても収拾がつかなくなりそうなので自粛。

そして、ここでもう一度。

いくらわたしの想いを込めていても、「ハードボイルドに、いこう」だけでは、さすがに「なんじゃらほい」となるだけなので、この合言葉にはほとりび流の解釈を3つ、つけています。

ハードボイルドに、いこう

●タフであろう
思い通りにいかなくて当たり前
伝わらなくて当たり前
だから、「どうしたらできるか」
仲間と共に考える

●優しくあろう
自分の手元にある仕事は
なんのためにあるか?
誰のためにあるか?
「仕事のその先」を想像する

●健やかであろう
よい仕事をするためには
心身ともに健康であること
不調や悩みを隠さずに
自分をオープンに、すこやかに

 

解釈のもとになっているのは、前述のこの言葉。

「タフでなければ生きていけない。優しくなければ、生きていく資格がない」

ハードボイルド小説の大家であるアメリカの作家、レイモンド・チャンドラー(1888-1959)。

彼がのこした長編小説はわずか7作しかないのですが、その最終作『プレイバック』に出てくるのがこの言葉です。チャンドラーが生み出した孤高の探偵、フィリップ・マーロウの台詞。

 

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人間の心理として、ついつい「優しくある」ことを真っ先に掲げてしまいたくなりますが、世の中そんなに甘くはない。仕事も、楽しいうれしいことばかりではありません。だから「タフである」ことが先にくる。まず、その納得感がすごくあります。

かといって、ただバキバキに強ければいいってわけでもない。「生きていけない」と「生きていく資格がない」の違いですよね。優しさに裏付けされたタフさじゃなければ、意味がない。

ちなみに解釈3つ目の「健やかである」は、わたしが勝手に追加しました。やっぱり、「タフである」「優しくある」この2つを両立させるには、心身ともに健康じゃないと。

 

この3つの解釈は、わたしが10年以上仕事をしてきて、「絶対に必要なこと」だと身にしみて感じている要素でもあります。自分に対する、大いなる反省もふくめて。

「タフさ」は「無慈悲さ」とイコールではないし、「優しさ」は「甘さ」ではない。「健やかさ」は、身体だけではなく心にも必要。

ほとりびは、そんなニュアンスを包括した「ハードボイルド」なチームでありたいな、と思っています。

 

たぶんこれは、自分に言い聞かせている言葉だ

と、それらしいことをつづってきましたが、結局この“合言葉”は、会社をつくり経営をはじめてしまったわたしが、自分自身に言い聞かせ、拠りどころにするために必要だったものなんだと思います。

よしもとばななさんの小説で、こんな台詞が出てくる作品があります。

「ハードボイルドに生きてね。どんなことがあろうと、いばっていて」

 

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どんなことがあろうと、まあ……いばる必要はないけど、ハードボイルドにいきたいと思います。まだまだ、圧倒的に台詞負けしていますけどね。これからがんばります。